※過去捏造 ほとんどルーンロードとサタンさまの絡みです












「お前がルーンロードか」

サタンの目の前に、長い銀髪をなびかせる人影があった。
闇の魔導師、ルーンロード。
その名前はサタンの耳にも届いていた。

人々から悪の魔導師とも呼ばれ、
様々な悪行を連ねている大魔導師。

と、サタンはそう聞いていたのだが。

「とんだ甘い男だな」

ルーンロードの周りには自然に出来たとは思えない怪我を負っている魔物達が懐いていた。かなりの数だった。
実験などに使われ迫害された弱い魔物達ということはすぐ分かった。

今回、ルーンロードは巨大都市を1つ壊滅させた。
この事はたちまち世界にまた知れ渡り、更に悪の魔導師として名を轟かせることだろう。

…しかしこの都市は非道なことを裏で行っている黒い噂が絶えなかったらしい。
サタンも小耳には挟んでいてこの都市の名は知っていたほどだ。

壊れた建築物、殺された人間、
生きている弱弱しい魔物。
十分に現状は把握できる状況だ。

「…破壊されてる都市がおいたをしてる所ばかり、というのは偶然じゃなかったのだな」
「………」
「そんなことをして何になる?闇の魔導師風情が偽善活動か?」

サタンはルーンロードにゆっくり近づく。不思議と警戒はされない。
ルーンロードは足元にいる猫らしき魔物を抱き上げ、優しい手つきで撫でる。
腕の中に抱かれた魔物はすごく幸せそうに喉を鳴らした。

「……別に、この都市の人間が私に害を加えてきた。だから壊しただけです」

ぽつりと、初めてサタンに対し口を開いた。

「ならばその魔物も殺せばいいだろう?
どうせ実験に使われるほど弱い魔物なのだからどこで野垂れ死のうが誰も構わない」
「…無益な殺生はしない主義ですので」

あくまで魔物は殺さない気らしい。
ならば、

「じゃあ私が殺してやろう」
「…っ!!」

片手に闇の魔導をこめ、魔物の群れに放つ。
ルーンロードは目にも止まらぬ速さでサタンの魔導を相殺した。

「………!!」
「ほう」

かなり魔力をこめたつもりだったが、弾き返された。
なるほど。ここまで強ければ並の魔導師やそこんじょそこらの魔族は相手じゃないだろう。

そんな奴がさっきまでサタンに無関心といった様子だったのに、
今はっきりとサタンに対して敵意を向けている。
ご丁寧にも魔物を庇う形で。

「くっ…ははははは!!」
「!?」

突然笑い出したサタンにルーンロードは思わず後ずさる。
そんなことには構わず笑いながらルーンロードに近づくサタン。
先程の攻撃でさすがのルーンロードもサタンを睨む。

サタンはルーンロードの前に立つと一言言った。

「気に入った。私の手下にならないか?」
「断ります」

ーーーーー

「ルーン、どうだこの塔!」
「…悪趣味としか言いようがないですね」
「このセンスの良さを分からないとは全くどうかしてるな」
「魔力を無駄遣いする貴方に言われたくありません」

あの後、サタンは何かにつけルーンロードに構うようになった。
初めこそ鬱陶しそうにサタンを敬遠していたが、
度重なる事件や出来事にことごとく強引に巻き込まれ
いつの間にかサタンの言葉を返してくれるようにまでなった。

そんな二人が交わす会話はいつも、

「私の手下になれルーンロード」
「嫌です」
「私の手下になれば三食昼寝はもちろん魔導書も読ませてやるぞ?」
「………何度も言いますが断ります。そんな口に乗るほど軽くは」
「交渉の余地が見えた」
「うるさいですねっ!!」

楽しかった。
退屈なほど長い時間を生きていて、しばらく面白いことに巡り合えていなかったサタンにとって
このルーンロードという男は楽しみの一つとなっていた。

(ずっとこの楽しみが続けばいいのだがな…)

そんなことまで思うようになっていた。
そしてもちろん、その願いは叶わなかった。

「サタン様、闇の魔導師ルーンロードがとある勇者によって葬られたと…」

ある日自分の部下から朝の挨拶と共にルーンロードが亡くなったと報告された。
あまりにもあっけなくあの楽しかった時間は無くなってしまったことに少し放心しかけたが、すぐに気をとりなおした。
サタンにも分かってはいた。
闇の魔導師なんていつ死んでもおかしくない存在。
いつまでも続くはずはなかった。

不思議と悲しくはなかった。
ああ、やはりこうなったかという妙な納得だけが
サタンの感情を塗りつぶしていた。

「さよなら、闇の……いや、私の友よ」












「シェゾ、私の手下になる気はないか?」
「…そうか。ついにボケたか。迷惑だから永遠に城で眠っておけ」

目の前の銀髪の男はそっぽを向く。全く可愛くない。
しかしここで少し褒美をちらつかせてみると。

「三食昼寝、魔導書読み放題の条件をつけてもか?」
「………断る」

少し迷いを見せた。それがあまりにもあいつと似ててつい笑ってしまう。
笑い声を漏らしたサタンにシェゾは怪訝な顔を作る。

「…なんだ気持ち悪い」
「気持ち悪いとは失礼な」

自分に対して無遠慮なこの振る舞いもそっくり。
でも全てが似ている訳ではない。違うところもいくつかある。

「シェゾ」
「何だ」
「綺麗な瞳だな」

今度こそシェゾは何を言ってるのか分からないと言いたげにサタンを見つめる。
自分を見つめてくるその瞳はとても蒼い。

「あいつは紅かったからな」
「…?何の話だ」
「いやこっちの話だ」
「本当にお前ボケたんじゃないか?」
「…そうかもしれないな」

サタンはシェゾの言葉を肯定すると背を向け、ぼんやり青い空を見つめた。

今度は、今度の友はもう決して手放したくない。
などと心の何処かで思っている自分に気づき、自分はもう何処か壊れてるかもしれないとサタンは思った。
シェゾがいなくなったら自分はどうするのだろうか。

サタンはシェゾの方に向き直る。
シェゾはますますサタンが分からないらしく、明日は槍の雨でも降るのかと呟いていた。

一呼吸おいて、サタンがシェゾに言う。

「なあシェゾ」
「…何だ」
「私より先に死んでくれるなよ?」

(ずっと一人は寂しいから)
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