目の前の銀色の髪を撫でてやると滑らかな感触が指をくすぐった。
見つめてくるのは澄んだ蒼い瞳。

サタンはシェゾの頬に手を当てる。
肌触りはなかなか良かった。

「シェゾ、嫌い」
「好き、サタン」

こちらが意地悪く言うと、あちらは悪戯っぽく笑う。

「嫌いだ。殺したいほど憎い」
「愛してる。誰よりも大好き」

この言葉の意味も、今だけ嘘になる。
シェゾが唯一サタンに『好き』という時。

例えそれが『嘘』だったとしても。

「…一言でいいから嫌い、とか言ってみないか?」
「何でだ?俺はお前の事好きなのに」

挑発するようにシェゾはサタンに近づく。
一見にしてみると本当に綺麗な笑顔だった。

傍から見れば完全に恋人同士の状態。
それさえも『嘘』と言わんばかりにシェゾは普段見せないような行動を見せる。
ゆっくりとサタンの背中に手を回し、緩く抱き締めた。

「抱きつくほどに私が好きか?」
「ああ好きだよ。魔王様」

嘘でも聞いていたい偽りの言葉。
シェゾは好き、と言葉こそ言っているが
その言葉には皮肉めいた感情が混じっていた。

不意に、時計を見やるとサタンは思い出す。
この嘘には期限があることを。

「シェゾ、知ってるか?」
「何をだ?」
「エイプリルフールは12時までだってこと」
「…ああ」

その時、丁度部屋の時計の針が重なった。

「好き、シェゾ」

サタンは全身で強く抱きしめる。
『好き』と『嫌い』が反転した今。

「大嫌いだよ馬鹿魔王。」

ほら、やっぱり嘘だった。
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