どうしてこうなったのか、なんて経緯は強いて言えば何となくだ。

ぷよ勝負して、今日は特別に暑くて、じゃあ近くにある私の家で涼みましょうと。
ウィッチの家でアルルとルルーがお邪魔した。

アルルは炎天下でぷよ勝負をしたためへとへとだったらしい。
ウィッチに手渡された冷たい麦茶を飲むと涼しい場所で寝てしまった。

ルルーは自慢の体力と気迫でいつも持ち歩いている扇子を強く仰いでいる。

「あ~暑かったわ」
「なぜこの暑い日にぷよ勝負なんかしてたんですの?」
「心頭滅却すれば火もまた涼しってね。暑さに負けずアルルにぷよ勝負付き合ってもらったのよ」

ウィッチは横をチラ見すると窓側にカーバンクルと共に伸びているアルルの姿が見えた。
アルルの様子を見ると、付き合わせたというのが正しいかもしれない。
しかしそこは突っ込まずウィッチは飲み干したルルーのコップにまた麦茶を注ぐ。

「…なぜそんなにも強くなろうとするのですか?」
「決まってるじゃない。サタン様の妃になるため…」
「貴方はもう十分強くなってますわ。ぷよ勝負ならシェゾさんとどっこいどっこいといったところですし、
 魔導は使えなくても並の魔導師となら渡り合えるほどの格闘を備えている」

ウィッチはルルーを見つめ、厳しい顔つきになる。
普段あまり真剣な表情になることはないウィッチの気迫にルルーは思わず黙る。

「人としては十分すぎるほど強くなってますわ…貴方は」
「でも、サタン様に振り向いてもらえるにはもっと強く…!」

「サタン様を愛した者は決して幸せになれない」

その言葉にルルーはびくりと体を震わせる。
彼女らしくない、動揺の色が傍目から見ても分かった。

「聞き覚えのある言葉じゃありませんこと?」
「……っ…」

よよよからサタンに恋をしているという青髪の女の子がいるという話を小耳に挟んでいた。
サタンとはどういう者か。私達表側に見せることのない残酷な裏側。

ルルーにも分かっている。
サタンがどれほど明るくお茶目に見えていても。
裏は絶対的にあるということが。

そして、人間であるルルーはサタンといつまでも一緒にいられないということも。

「ルルーさん」

ルルーの体が小さく震えている。
恐怖からではない。
やるせなさからと悲しさ、不安からだろう。

ウィッチは葛藤を続けている彼女に声をかけ、今度は優しく微笑んだ。

「知ってます?初恋って叶わないらしいですわよ」

世間一般でまことしやかに流れている事柄。
どんなに愛してもどんなに愛されていても、
初恋は乙女に味方しないということ。

ルルーはサタンが正真正銘初恋の相手。
この恋も叶わないということだろうか。
しかしルルーの体の震えはいつしか止まっていた。
俯いていた顔をあげ、いつもの機敏な態度に戻っていく。

「初恋だの何だの私には関係ないわ…その時まで、サタン様を想うだけよ」
「…それもそうですわね」

貴方やあの魔王に世間の常識は通用しないかもしれませんわ。
ウィッチはルルーのコップを見やる。

いつの間にかコップは空になっていた。

―――――

ぷよぷよでギャグ調になってもルルーの一途さには少し胸が痛む節があります
ルルーにもアルルとサタン様の関係性や関連性は分かってるんだと思います
でもあえてアルルにつっかかる
アルルにその気が無くてもつっかかる

サタン様が完全にアルルを選択するまで想い続ける
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