あっちの方から男声の喧騒が聞こえてくる。
こんな街の中であんなに大きな声を出して喧嘩する、なんて人は。
「貴様は一度深いぷよ地獄に落ちた方が世の為人の為だ! 一度落ちてこい!」
「やってみろよ! この変態ロリコン魔王が!」
ああ、やっぱり。
あの人達は本当にいつもあんな調子。
自分も本当に闇の魔導師と闇の魔王様なのか疑ったほどだ。
二人の周りには少し人だかりが出来ていた。
迷惑そうに顔をしかめる人もいれば、黄色い声を上げる女の子もいる。
う~ん…あの二人、黙ってれば美形の部類に入るのになあ…。
「うっせえ! お前なんか一生アルルの尻でも追っかけてろ!」
あ、決着がついたみたい。
この喧嘩、どうやらシェゾが引いたらしいね。
流石にこの街中でぷよ勝負はしなかったみたいだ。よかった。
言い合いが終わると途端にシェゾはこの場から走って去っていった。
サタン様は機嫌が見るからに悪そうな顔で逆方向に歩いて行く。
まるで子供の喧嘩だな…。
………。
―――――
「くそっあの変態め…俺はアルルに如何わしい事なんて考えてないぞ。」
少し歩いた街外れの開けた場所にシェゾがいた。
建物の隅っこで足を投げ出して不機嫌に座っている。
「こ・ん・に・ち・は♪ 闇の魔導師?」
「彗星の魔導師…」
僕が声をかけると、やっぱり彼は警戒をあらわにする。
光属性と闇属性は基本的にあいまみえないなのは僕でも知っている。
特に彼は『闇の魔導師』という肩書きを持ってるし、僕を警戒するのは至極当然の事。
それでも僕は君に敵意、なんてものは無いんだけどね?
むしろ…
「ねえ、君サタン様と喧嘩してたよね」
「…見てたのか」
「うん」
さりげない形でシェゾの隣に座ってみる。
拒否はされない。不可解な顔はしたけど。
「君達、いつも喧嘩してるよね」
「ふん…あいつがいつも俺に絡んでくるだけだ。大体…」
…あれ、いつの間にか僕は愚痴を聞いてあげる役になっちゃったみたい。
シェゾはイライラを吐き出すように僕にサタン様の不満や悩みをぶつけてくる。
アルルの事、魔力の事、果てはどうでもいいような小さな事まで事細やかに…。
うーん…いつ終わるのかなあ。とか思っていたら彼が僕の方向を見てきた。
「どう思う? 彗星の魔導師。」
「そうだね…とりあえず…」
僕は、シェゾに向かって一言言ってあげた。
「すごく、仲がいいんだね」
そう言ったら彼はポカンとした表情で僕を見てきた。
何を言っているのか分からないと言いたげな表情、かな?
「…お前にはあの喧嘩が仲良しこよしに見えたのか。眼科に行った方が良いぞ」
「失礼だなあ。僕は至って普通の目だよ。そうじゃなくて…」
僕は一呼吸おいて彼に話しかける。
「君達って確かに仲は悪そうだけど、見えない何かで繋がってる感じがするんだ。
断ち切りたくても断ち切れない何かが…」
彼はますます分からないような表情を浮かべる。
…これはひょっとしなくても無意識だね。
「分かんないかな? ごめんね、変なこと言っちゃって。
でも君の愚痴くらいはいつでも僕が聞いてあげるよ、シェゾ」
僕は笑顔を彼に向ける。
頭を撫でたのはちょっとやりすぎたかな?
「お前………変な奴だな」
今度は困ったような苦笑いを浮かべた。
ふふっ笑ってくれた。
じゃあここらで僕の超特性キャンディーを…
「シェ、シェゾー!!」
ドドドっていう効果音はしなかったけど聞こえたような気がした。
サタン様がシェゾに一直線に向かって走って来ている。
正直、ちょっと怖い。
「シェゾ! アルルにまたふられた!」
「だからって何で俺の所に来るんだよ! 意味わからないぞお前!」
隣でシェゾとサタン様の取っ組み合いが始まる。
もうちょっと余所でやってくれたら嬉しいんだけどなあ。
あ、シェゾがサタン様にアレイアードを唱えた。
うわあ…すごい勢いで吹き飛ばされてった…。
「全く! 何で俺の周りには変な奴しかいないんだ!」
シェゾが全速力で走って逃げていった。
君も十分変だと思うけどね。変態さん。
…と、サタン様がこっちに向かって歩いてくる。
僕は立ち上がってサタン様の方を向く。
サタン様は僕の目の前で立ち止まり、赤く鋭い目で僕を見据えてきた。
「貴様…何の真似だ?」
さっきのふざけた声とは違った低い声。
やっぱり、そうか。
「別に。ただシェゾと話していた、それだけのことです」
嘘は言ってない。
それでもサタン様のしかめっ面は消えない。
突き刺すような視線でこちらを睨んでくる。
…そんなに僕の本音を聞きたいのかな。ならいいよ、言ってあげますよ。
僕はサタン様に近づき、そっと一言呟く。
サタン様は驚愕した顔になり、すぐに僕を笑った。
「出来るものなら…な。やってみるがいいさ」
サタン様はきびすを返し、去っていく。
辺りが静まり返る。
しばらく僕はその場に立ち尽くしていた。
自然と、笑いが立ち込めてくる。今日は特にいろんな事を体験しちゃった。
ふふふっサタン様、かなり動揺してたな。
大方、シェゾを奪おうとする輩は今までいなかったのだろう。
いたとしてもサタン様のお気に入りということで手が出せなかっただけ。
でも、僕は…そこまで甘くないですよ、サタン様。
…楽しい事になるといいな。
『サタン様、油断してると…僕がシェゾを貰っちゃいますよ?』
横恋慕と通せんぼの始まり。
こんな街の中であんなに大きな声を出して喧嘩する、なんて人は。
「貴様は一度深いぷよ地獄に落ちた方が世の為人の為だ! 一度落ちてこい!」
「やってみろよ! この変態ロリコン魔王が!」
ああ、やっぱり。
あの人達は本当にいつもあんな調子。
自分も本当に闇の魔導師と闇の魔王様なのか疑ったほどだ。
二人の周りには少し人だかりが出来ていた。
迷惑そうに顔をしかめる人もいれば、黄色い声を上げる女の子もいる。
う~ん…あの二人、黙ってれば美形の部類に入るのになあ…。
「うっせえ! お前なんか一生アルルの尻でも追っかけてろ!」
あ、決着がついたみたい。
この喧嘩、どうやらシェゾが引いたらしいね。
流石にこの街中でぷよ勝負はしなかったみたいだ。よかった。
言い合いが終わると途端にシェゾはこの場から走って去っていった。
サタン様は機嫌が見るからに悪そうな顔で逆方向に歩いて行く。
まるで子供の喧嘩だな…。
………。
―――――
「くそっあの変態め…俺はアルルに如何わしい事なんて考えてないぞ。」
少し歩いた街外れの開けた場所にシェゾがいた。
建物の隅っこで足を投げ出して不機嫌に座っている。
「こ・ん・に・ち・は♪ 闇の魔導師?」
「彗星の魔導師…」
僕が声をかけると、やっぱり彼は警戒をあらわにする。
光属性と闇属性は基本的にあいまみえないなのは僕でも知っている。
特に彼は『闇の魔導師』という肩書きを持ってるし、僕を警戒するのは至極当然の事。
それでも僕は君に敵意、なんてものは無いんだけどね?
むしろ…
「ねえ、君サタン様と喧嘩してたよね」
「…見てたのか」
「うん」
さりげない形でシェゾの隣に座ってみる。
拒否はされない。不可解な顔はしたけど。
「君達、いつも喧嘩してるよね」
「ふん…あいつがいつも俺に絡んでくるだけだ。大体…」
…あれ、いつの間にか僕は愚痴を聞いてあげる役になっちゃったみたい。
シェゾはイライラを吐き出すように僕にサタン様の不満や悩みをぶつけてくる。
アルルの事、魔力の事、果てはどうでもいいような小さな事まで事細やかに…。
うーん…いつ終わるのかなあ。とか思っていたら彼が僕の方向を見てきた。
「どう思う? 彗星の魔導師。」
「そうだね…とりあえず…」
僕は、シェゾに向かって一言言ってあげた。
「すごく、仲がいいんだね」
そう言ったら彼はポカンとした表情で僕を見てきた。
何を言っているのか分からないと言いたげな表情、かな?
「…お前にはあの喧嘩が仲良しこよしに見えたのか。眼科に行った方が良いぞ」
「失礼だなあ。僕は至って普通の目だよ。そうじゃなくて…」
僕は一呼吸おいて彼に話しかける。
「君達って確かに仲は悪そうだけど、見えない何かで繋がってる感じがするんだ。
断ち切りたくても断ち切れない何かが…」
彼はますます分からないような表情を浮かべる。
…これはひょっとしなくても無意識だね。
「分かんないかな? ごめんね、変なこと言っちゃって。
でも君の愚痴くらいはいつでも僕が聞いてあげるよ、シェゾ」
僕は笑顔を彼に向ける。
頭を撫でたのはちょっとやりすぎたかな?
「お前………変な奴だな」
今度は困ったような苦笑いを浮かべた。
ふふっ笑ってくれた。
じゃあここらで僕の超特性キャンディーを…
「シェ、シェゾー!!」
ドドドっていう効果音はしなかったけど聞こえたような気がした。
サタン様がシェゾに一直線に向かって走って来ている。
正直、ちょっと怖い。
「シェゾ! アルルにまたふられた!」
「だからって何で俺の所に来るんだよ! 意味わからないぞお前!」
隣でシェゾとサタン様の取っ組み合いが始まる。
もうちょっと余所でやってくれたら嬉しいんだけどなあ。
あ、シェゾがサタン様にアレイアードを唱えた。
うわあ…すごい勢いで吹き飛ばされてった…。
「全く! 何で俺の周りには変な奴しかいないんだ!」
シェゾが全速力で走って逃げていった。
君も十分変だと思うけどね。変態さん。
…と、サタン様がこっちに向かって歩いてくる。
僕は立ち上がってサタン様の方を向く。
サタン様は僕の目の前で立ち止まり、赤く鋭い目で僕を見据えてきた。
「貴様…何の真似だ?」
さっきのふざけた声とは違った低い声。
やっぱり、そうか。
「別に。ただシェゾと話していた、それだけのことです」
嘘は言ってない。
それでもサタン様のしかめっ面は消えない。
突き刺すような視線でこちらを睨んでくる。
…そんなに僕の本音を聞きたいのかな。ならいいよ、言ってあげますよ。
僕はサタン様に近づき、そっと一言呟く。
サタン様は驚愕した顔になり、すぐに僕を笑った。
「出来るものなら…な。やってみるがいいさ」
サタン様はきびすを返し、去っていく。
辺りが静まり返る。
しばらく僕はその場に立ち尽くしていた。
自然と、笑いが立ち込めてくる。今日は特にいろんな事を体験しちゃった。
ふふふっサタン様、かなり動揺してたな。
大方、シェゾを奪おうとする輩は今までいなかったのだろう。
いたとしてもサタン様のお気に入りということで手が出せなかっただけ。
でも、僕は…そこまで甘くないですよ、サタン様。
…楽しい事になるといいな。
『サタン様、油断してると…僕がシェゾを貰っちゃいますよ?』
横恋慕と通せんぼの始まり。
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