「ウィッチ!シェゾ見なかった!?」

お昼、小さな木造の一軒屋の薬屋にアルルがやってきた。

目からビームが出るようになる薬、エラ呼吸ができるようになる薬など
変な薬ばっかり置いてあるこの店だが、
とある一件から風邪薬や傷薬も置かれるようになった。

ウィッチのお店だ。

突然訪ねてきたアルルに対するウィッチは
今薬棚を整理しているところらしい。

ウィッチはアルルの方を一瞥すると

「いえ、見てませんわね」

手を動かしながらウィッチが答える。

「そうか…」
「どうかなさいましたの?」

残念そうに悔しそうにうなだれるアルルを見て
ウィッチは何があったのか疑問に思った。

「実はシェゾが小さい女の子を泣かせたんだ」

許すまじ、と後につく勢いがあるようなしっかりした発言だった。
薬棚の整理の手を止める。

「まあ…それはひどいですわね」
「だからシェゾを見かけたら教えて!捕まえてとっちめてやるから!」
「了解ですわ」

アルルは店を後にした。
静かになった店の中、ウィッチはカウンターの中の一点を見やる。

ゆっくりとカウンターに近づき、店の中に静かな声が広まる。

「…だそうですが?」
「……誤解だ」

カウンターの中からゆっくりと紺色のマントを被った銀髪の青年が出てくる。
普通の人より身長が高い彼は低い天井に頭をぶつけそうな勢いだ。

「まさか貴方に幼子を泣かせる嗜好があるとは思いませんでしたわ。さすがヘンタイ」
「だから誤解だって言ってるだろ!それにヘンタイってい・う・な!」

ヘンタイという言葉に敏感になるシェゾ。

(そんな必死になるからますますヘンタイの印象をつけられますのに)

呆れたような諦めたようなため息を心の中でつくウィッチ。
と、ふとさっきの誤解という発言を思い出し、シェゾに問いかける。

「誤解だって言ってましたけど、真相はなんですの?」
「…ちょっとな」
「ほえ?」

少し言いにくそうにしている彼を見て、まさか本当に子供を泣かしたか。
そんな考えが浮かんだ矢先にシェゾが弁護をする。

「気に入りのぬいぐるみが池に浮かんでて、子供が取れないって泣いてた」

ああなるほど、と
さっきのアルルの様子とシェゾの発言でウィッチは大体状況をつかんだ。

「そして柄にもなくぬいぐるみをとってあげたはいいが、
 ずふぬれ状態のぬいぐるみを見て更に泣き出し、そこへ偶然アルルさんが通り掛かった、と」

シェゾが少し驚いたように目を見開く。
どうやらビンゴのようだ。

「お前…見てたのか?」
「いえ、ただの勘ですわ」

本当にただの勘である。
なんやかんや長いこと一緒にいた女の勘。
ウィッチは悪戯っぽく微笑む。

不意に、外で甲高い大きな声が二人の耳に入る。

「お兄ちゃん!うさちゃん助けてくれたお兄ちゃんどこー?」

店を出ると、少し遠くにシェゾが助けた女の子が歩いていた。
女の子はこちらの方を見ると、シェゾの元に嬉しそうに駆け寄ってくる。

「見つけた、お兄ちゃん!うさちゃん助けてくれてありがとう!」

一寸の曇りもない純粋な笑顔でお礼を言う少女。
すごい身長差だが、シェゾはしゃがむということはしなかった。

「わざわざそれを言いに来たのか?」

まさかわざわざお礼を言いに探しにくるとは思っていなかったらしく
少しとまどっているようだった。

「うん、助けてくれたのに泣いちゃったから…ごめんね」

少女はごめんなさいと頭を下げる。
シェゾは少しゃがみ、なんとなく少女の肩に手を置いた。

「いや…いい。もう落とすなよ」
「うん!じゃあね!」

あのシェゾが肩に手を置いて優しく声をかけたことに
ウィッチは少なからず驚いていた。

そういえば彼は動物が好きだったことを思い出し、
基本的に小さい動物や子供には優しいのかもしれないと解釈を進めた。

少女はあっという間に走り去っていった。

「よかったですわね?シェゾさん」
「別に良いも悪いもない」

照れ隠しなのかシェゾはそっぽを向く。
そのしぐさを見たウィッチは分かりやすい嘘、とくすりと笑う。

そしてすぐさまさっきの少女とはまた違う声が響き渡る。

「あー!シェゾ!!やっぱりここだったんだね!」

ずんずんとシェゾの元に駆け寄るアルル。
怒りの形相をあらわにしている。

「…ウィッチに匿ってもらおうと今、ここに来た」

すかさずシェゾは少し困った表情を浮かべた。
正確には表情を作った。

(…本当に嘘つきでいらっしゃること)

嘘をつくのは魔女の、私の特権ですのに。
息をするように嘘をつくシェゾに少し対抗心が芽生える。

「やけに素直じゃないか。じゃあそれに免じて今回はダイアキュート×2&ジュゲムでいいよ」
「ああ…もう小さな子を泣かせたりはしない」

「シェゾ!歯を食いしばれ!」

すぐさま爆音が一帯に響き渡る。
お店は一応壊さないように手加減と調整はしてくれている。
それでもシェゾにとって今日は厄日だったことだろう。

つくづく運がない方ですわね~…。

彼の不運さにはさすがのウィッチも感服する。

シェゾとアルルの喧嘩の剣幕がこちらに流れてくる。
その様子を見ているウィッチは誰にも気づかれぬよう、少し黒い色が混ざった笑顔を浮かべる。

(そんなところも含めて、私は貴方を気に入ってるんですけれど…、ね)

―――――

シェウィのつもりがウィ→シェに

この二人も個人的に好きなカップです
魔導師の塔はもう公式CPだったと思う…!

まあ製作者さんが違うとかなり印象が変わるんですg

ウィッチって普段見え見えの嘘ついてるけど
本気で嘘をつくときは誰にも気づかれないほどの嘘つきや

そんなだったら私は萌える
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