「呼ばれて飛び出てラブラブ~☆恋のキューピット!ただいま参上!」
「…は?」

時はバレンタインまで遡る。

いつものように静寂と闇につつまれた洞窟で
ゆったり本を読んでいるシェゾに

「つ~かまえた!!」
「のわああぁぁあっ!?」

いきなりサタンに後ろから抱きつかれたのだ。
当然シェゾは抗議しようと剣を片手に振り向くが
サタンの姿はどこにもなかった。

その代わり手に握られていたのは一つの小さな箱。

この箱、いくら攻撃しても燃やしても捨てても
必ずシェゾの元に帰ってくるという何とも迷惑すぎる代物だった。

サタンに箱をつき返すが、何気ない顔であしらわれた。

「まあそうカリカリするな。しばらく経てば…その箱が何か分かるから」

と意味深な言葉を残したまま今の今までこの箱はシェゾにひっついていた訳だ。
そして今日、その箱がいきなり光り何とも妙ちんちくりんな魔物がシェゾの目の前に浮かんでいる。

という現状。

「サタン様の命により箱の中に潜っていました!これから貴方の恋をお助けします!」
「状況がいまいちよく分からん」

さっきから噛み合わない会話合戦を繰り広げいているが
要約するとこの天使は恋を手助けをする天使で
シェゾのお手伝いをしようということだった。

「俺は別に好きな奴などいない」
「へぇ~…」

天使はシェゾの周りを飛び交い、隅から隅まで観察するように眺める。
そして天使はさっそうとメルヘンなステッキを取り出す。

「貴方は素直になれない性格のようですね♪
 そんな貴方に素直になる魔法をかけてあげましょう~!」
「おい人の話を聞…」

洞窟の中がピンクの光りに包まれる。

―――――

「どういうことか説明してもらいますわよ」
「どういうことですかサタン様」
「どういうことなのサタン」
「どういうことですのサタン様!」

一斉に四人が詰め寄る。
その四人の視線の先にはサタンがしどろもどろしている姿があった。

「あ~…別に私は何も…」
「何もないわけないじゃありませんか。
 シェゾさんは確かに天使封印の魔法の箱を持ってましたわ」
「サタン様…まさか魔法でシェゾのことを…」
「ひどいっ!私というものがありながらサタン様!」

ウィッチは数日前、シェゾの持っていた箱に興味を持ち、
文献で調べたところ天使封印の箱だったことが発覚。
それを聞いたアルル、ルルー、レムレスにサタンは尋問に近い
事情聴取を受けていた。

「あぁもう!私は何もしてないと…」
「サタン様~!魔法をかけておきました~!」

サタンの反論の声を遮り、元気いっぱいの声が響き渡る。

「ご命令どおり、銀髪の青年にぴったしの魔法をかけておきました!」

この言葉を聞いて一気に駆け寄ったのはルルーだった。

「ちょっとアナタ。どういうことかきちんと説明しなさい」

今にも殺されそうな形相で睨まれ、天使っぽい魔物はすごむ。
天使は涙目でサタンの方を向く。
助けを求めているようだ。

しかしバツの悪そうな顔をするだけで
行動を起こそうとはしなかった。

「言わないと…」
「わあぁあ!分かりました!分かりましたから殴らないでえ!」

ルルーが手を鳴らしながら近づくと天使は謝罪の言葉を並べ、
そこから一気にまくし立てるように説明を始めた。

―――――

「呼ばれて飛び出てラブラブ~☆恋のキューピット!ただいま参上!」
「ふむ、お前が恋を助ける天使とやらか」

天使曰く、自分はバレンタインデーにサタンに呼ばれて出たと。
自分は2月14日と3月14日、誰かの恋を叶えるという仕事をしているが、
今年はサタンに召喚という形で呼び出されサタンの恋に関することを1つ叶えることとなった。
その内容が…

「1ヶ月間この箱に封印されててくれないか?」
「はい!……ってええええええ!?」

それのどこが恋に関することなのだと天使は怒りそうになるが、
よく聞いてみると、サタンは気になる奴がいるとのこと。
その相手が全然素直じゃないからホワイトデーの時に素直になる魔法をかけてほしいと。

それを聞いた天使は断る理由などなく、サタンの願いは叶えられることとなった。
そうしてホワイトデーまでこの天使は封印され、今日出てきてシェゾに魔法をかけた。

その魔法とは相手に素直になる魔法。
直結に言うと、シェゾが好きな相手に告白するということ。

とのこと。

「「「「………」」」」

一同に沈黙が流れる。
四人は目を丸くして驚きを隠せないようにポカンとしている。

「サタン様…召還魔法の実験台にするにしてもシェゾは選択ミスじゃありませんこと?」
「あ、そこなんだ」

ルルーはサタンが魔法の肩慣らしにシェゾを被験者にしたと思ったようだ。
アルルがすかさずツッコミを入れる。

その時。

数メートル先の茂みがガサッと動いた。

一同は本日二度目の驚愕を顔に浮かべた。
なんと茂みの中からシェゾが現れたのだった。

目の焦点が合っていないが、しっかりした足取りでこちらに少しずつ近づいてくる。

「あ…この中の誰かに告白するみたいです」
「「「「「何!!?」」」」」

天使の言葉に過敏に反応し、一同の台詞が被る。

シェゾがこの中の誰かに告白をするということ。
その現状が今だに現実感を持てていないのか誰もがその場から動けずにいた。

アルルはあわて、ルルーとレムレスは静かにその様子を見守っている。
サタンとウィッチは真剣な顔つきでシェゾの行動を凝視。

シェゾは、もうすぐそこだった。



















しかし突然彼は後ろにひっくりかえった。
地面に叩きつけられる鈍い音が森の中に響く。

彼の足元にはバナナの皮。

「あっ!転んだ」
「見事なフォームで転びましたわね」
「…というか。今時バナナの皮で転ぶ人、初めて見たわ」

女性陣はシェゾの転びにそれぞれ反応を見せる。
同時に、サタンとレムレスはシェゾの元に駆け寄った。

「大丈夫?シェゾ…」

レムレスがシェゾを覗き込む。
血は出ていないらしく、少し安心する。

ゆっくりと蒼い瞳が映った瞼を開けるとシェゾが起き上がった。

「うう…あれ?ここはどこだ?」

シェゾは不思議な顔つきで辺りを見回す。
これに驚いたのはサタンだった。

「…おい天使、魔法が解けたのか?」
「あ…私の魔法はあくまで恋を手助けするものでありますからして…
 一応強い衝撃を受ければ魔法は解かれるかと」

つまり。
シェゾの肝心のカミングアウトは謎のままになってしまったのだった。

「…もう一度かけることはできないんだったな」
「できません…私の魔法は2月と3月の14日の一回限りですゆえ」

天使は申し訳なさそうに今回の事件の結末を悔やんでいた。
まさかこういう事になるとは思いもしなかったのだろう。

つくづくツイてるんだかツイてないんだか分からないと
サタンは呆れた眼差しを向ける。

「あ…そろそろお時間ですね!それでは!また来年~!」

ボンッと音を立て天使はピンクのハートを撒き散らし消える。
来年呼び出すことはもうないだろう。

だが。

「な、何だお前ら…」

さっきの『告白』という事実に関しては見逃していないつもりだった。
5人はシェゾを無表情で取り巻く。さっきのサタンと近い尋問を浴びせる。

「誰が一番好きなの!?」
「はああ!?」

一番先に口を開いたのはアルル。
それは大きな声でシェゾの好きな人は誰なのか直球に問いかけた。

「そ、それは…」

その質問に対し、目線を逸らして口ごもるシェゾ。
5人はこの反応を皮切りに一斉にお喋りの質問を開始した。

「それは?それはなぁに?シェゾ」
「何なのだ!シェゾ!気になって眠れなくなる!」
「…お教え下さいませ?シェゾさん」

ばらばらに言葉を投げかけ、森の中はもはや騒音状態である。
シェゾは下を向いたまま何も言わない。

(…言えるわけないだろ)

シェゾは誰が一番なのか言えなかった。だって、

お前ら…の魔力…が欲しい!だなんて!!


おまけ

「君…今度は何を餌にしているんだい?」

シグに無理矢理森に連れてこられたクルークは
シグが仕掛けている餌が変わったことに気がついた。

「バナナ。カブトムシ、集まる。」
「はちみつの方が集まるんじゃないか?」


――――――

まさかのオチ
あ、ごめんなさい殴らないで
自分でもひどいと思ったから

ホワイトデーだから自重できなかったんだ
年中自重してないとは思うけど…

私の作品はシェゾ=受け、もしくはサタシェ傾向がありますが
誰が好きなのか、誰とくっつくのかは曖昧にしておきました

それでこそのぷよぷよキャラですから
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