「今日は今日は! なんとハロウィーン!」
「………」

今日はプリンプのハロウィンの日。
夜の墓地で幽霊の双子がはしゃいでいた。
はしゃいでいるのはユウちゃんだけであったが。

「レイ君~! せっかくのハロウィンだからもっと盛り上がろうよ~!」
「…楽しいよ」

本人はこれでも盛り上がっているほうだったらしい。
ユウちゃんはレイ君のそんな性格を知ってか知らずかいきなり腕を引っ張る。

「じゃあじゃあ街へ行こうよ! 今日はハロウィンだから幽霊が出たって全くもって不思議じゃないよ~?」
「…うん」
「そーいえば、トリックオアトリックって言えばお菓子がもらえるんだよね!」
「…どっち選んでもいたずらになっちゃうよ」

二人の幽霊は楽しげにふわりと街へ向かう。

「…ぐすっ…ぐすん」

しかしその途中、墓地の出口付近からかすかな声が聞こえた。

「ん? どうしたのレイ君?」
「…何も言ってないけど」
「でもでも、ユウちゃんのお耳には何かの声が聞こえるよ?」
「…うぅ…ふえぇん…」

進むにつれてだんだんその声は大きくなり、双子の幽霊は疑問の顔つきになる。
二人は声のする方向へゆっくり近づく。

「あっいたー!」
「!?」

ユウちゃんはお墓の合間で膝を抱えている幼い女の子を見つけた。
大きな声で叫んだため、女の子はびっくりしてしまったらしい。

「え…ぇ…ゆう、れい…? やだ、こっちこないで…!」
「何と! ユウちゃんとレイ君を呼び捨てにしたのは始めて聞いた!」
「いや…違うと思うけど…」
「やだ…どっかいって…!」

ユウちゃんとレイ君がおちゃらけた会話をしている間も
女の子は震えながら二人を警戒していた。

「大丈夫ですよ~怖くないでーすよ~?」
「怖いよう…」
「何で怖がるの?君も幽霊なのに~」

女の子はえっというような表情をした。
驚きのあまり泣き止んで動きが停止ししてしまっている。

「ち、違うよ…私幽霊なんかじゃないもん…生きてるもん」
「でもその足と生気のなさが感じられないそれは明らかに幽霊さんだよ? 君、もう死んじゃってるよ?」
「…そん、な…」

女の子はより一層泣きそうな表情に変わっていく。
さすがのユウちゃんも言葉を間違えたと少しあわてる。

「えと、直球に言い過ぎちゃったかな~?
 ねえ、君は死んでるってことを意識してなかったように見えるけどどうやって死んだの?」

どうやって死んだかなんて言葉は幽霊にしか使えない言葉だ。
女の子は泣きながら分からないと答えた。
分からないなんてことはないでしょうとユウちゃんは問い詰めるが、
本当に分からないらしく、ますます涙をこぼれされるだけであった。

「つまり君は気がついたら幽霊になってたと」
「うん…」

そう言われたらどうすることも出来ない。
実際自分もどうやって死んだか、どこで生まれたかはあまり覚えていない。
ある意味それは幸せなことかもしれないが。

「…じゃあ友達…」
「え?」
「おおっ! レイ君ナイスアイデア!」

そういうとユウちゃんはいきなり
困惑する女の子にとびっきりの笑顔でずいっと手を差し出した。

「友達! たった今から君はユウちゃんとレイ君とお友達! いいでしょ!」
「えっ…えっと」
「…成仏するまでここにいるといい」

女の子は二人の幽霊に誘われ、おずおずと手をとる。
心なしか女の子は笑顔になった。

「うん! 笑ってるほうがかわいいよ~」
「ありがとう」
「あっそうだ! 君、名前はなんて…」

その時――
ユウちゃんの言葉をさえぎり、いきなり爆発音が墓地に響く。

少し地面が揺れる。

「何だ何だ! 何が起こった~!?」

三人の幽霊は辺りを見回す。
気がつくとものすごい数の魂たちが墓地に漂っていた。
今日はハロウィンだから、では済まされない数の多さだ。

「ふははは…今日はお腹いーっぱい魂食べちゃうぞ」

ふと、数十メートル先に男がたたずんでいた。
両手を広げて何やら楽しそうにしている。

「むむっあそこに何だかめっぽう悪そうな魔物を発見!」
「そうさ…私は世界最強の魔物…名前はまだない…って誰だお前は!」

名前はまだないらしい魔物がこちらを睨む。
世界最強といえば通じるほどの強面だった。
女の子は恐怖で顔が青ざめ、ビクビク震える。

「んん? お前らは幽霊だな? 私の食事の邪魔をしないでくれるか」
「邪魔する気はないよ~…ただ…」
「ただ?」
「こんなに多くの魂、どっから持ってきたの? ハロウィンにしたってこの数は異常だよ?」
「ふふふ…よくぞ聞いてくれた!」

待ってましたといわんばかりに魔物はかっこいいポーズをびしっと決めた。

「この魂達は! 今日このプリンプで夜遅く歩いている子供達から吸い取った魂だ!
 夜遅く遊び歩いている悪い子供から魂を吸い取っても何ら問題はない! すごいだろう!」
「なるほど…だからこんなに魂が…」

高笑いをしている魔物の周りに魂が集まっていく。
その光景はおぞましいながらも綺麗な光景だった。

「ね、ねえ…あれ…」
「どうしたの?」
「あれ…私の…魂!

双子の幽霊は驚きの表情を表す。
確かに自分の魂ならば一目見れば分からないこともない。
それは理屈ではなく、何となく分かるという曖昧なものであるが確かなものでもある。

「何だこの魂お前のか? 集めた魂が幽霊体にならないように
 全部調整したのだがな…多すぎて誤差が出たか」
「い、いや…返して!!」

女の子は魂を取り返そうと魔物に近づく。
しかし…

「おおっと手が滑った」

無情にも魂は魔物の口に消え去った。
そればかりか、魔物は女の子に攻撃を喰らわせる。
女の子は悲鳴もあげず地面に叩きつけられた。

「ふっははは! 幽霊無勢なんぞに私は止められんわ!」
「…ユウちゃん」
「分かってる」

二人は合図をかわすとすっと消える。
次の瞬間、ユウちゃんは魔物の背後に回っていた。

「なっ…いつの間に」
「トゥームストーンストーム!」

呪文が墓地に響き渡り、あっという間に墓石が巻き上げられる。
魔物は攻撃する間もなく、墓石の嵐に巻き込まれ鋭い悲鳴を上げながら倒れる。
墓石の瓦礫から音をたてながら起き上がった瞬間レイ君が正面から光を放つ。

「うっぎゃああああぁぁ!!」
「…ごくり」
「………」

光が弱まり、魔物の姿が見え始める。
そこにいたのは…

「…コウモリ?」

普通のコウモリより少し大きいコウモリがいた。
彼の周りに集まっていた魂は本来いるべき子供達の体へちりぢりに散っていった。

「くっくそっ!お前ら私にこんなことしてただですむと…」

そこまで言いかけたとき、レイ君がポカリとコウモリを叩く。
コウモリはあっという間に気絶してしまった。

「…何らかの方法で外見だけを変えたんだね」
「まさに見掛け倒し! 魂達も元の場所に戻ったことだし、これで…」

ユウちゃんはゆっくり後ろに振り向く。
女の子が、青い光と共に消えていく光景が映っていた。

「…あははっ…私、成仏するんだ…」
「魂食べられちゃったから幽霊体も消えちゃうんだ…でも」
「でも?」
「幽霊はあんな攻撃じゃ成仏しないよ。
 成仏するのは未練がないときかお札貼り付けられた時とか…」

この年頃の女の子はまだやりたいことがいっぱいあるため未練が残りやすい。
だから若い人間は幽霊になることが多いのだが…。

「私ね…未練はないんだ。
 生まれたときから嫌なこと、辛いこといっぱいやってきて…」
「…」
「でもね、私今回でとても嬉しいことがあったの」

女の子は一息つくと笑顔で言う。

「ユウちゃんとレイ君、あなたたちがお友達になってくれたこと」
「ねえ、君は名前何て言うの?」

もう女の子の体は消えかかる寸前だった。
ユウちゃんはまだ女の子の名前を聞いてないことを思い出し、問いかける。

「私の…名前は……っ…っ…」

女の子は消えた。
あっけなく、消えた。

「…名前聞けなかったね」

レイ君はぼそっとつぶやく。
さっきまでの騒動が嘘のように墓地は静まりかえっていた。

「ねえ、レイ君。私達って何で幽霊なのかな」
「…」
「私達って未練さえ思い出せない。分かってるのはレイ君とは双子の兄弟だってこと」

ユウちゃんはぼんやり昔の事を思い出そうとする。
はっきりしたことは思い浮かばない。
思い出そうとすればするほど思い出すのを拒むように頭にかすみがかかる。

「レイ君」
「…何」
「レイ君は勝手に、消えちゃったりどっかに行ったりしないでね」

めったに出さないような表情をレイ君に向けた。
レイ君は答えなかった。
ユウちゃんはもう何も言わなかった。いつもの表情とテンションに戻る。

「よーし!じゃあレイ君!早く街へ行こうか!」
「…うん」

しかし今回の魂騒動で街は混乱状態に陥っており、
ユウちゃんとレイ君はいたずらすることもなくハロウィンは終わった。

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ユウちゃん&レイ君のハロウィンネタ小説カキコ!
この小説から見て分かるように基本的に私は死ネタ、狂乱、シリアス方向は書けません;;
どうしても軽いノリになっちゃったりします

そらがシリアス方向描こうと思ったらこんな感じなので
把握しておいて下さるとありがたいです
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