声が聞こえる、
賑やかで。とても楽しそうな声。
自分には一生聞くはずのなかったもの。
ここはどこだ?

「シグ!お誕生日おめでとう!!」
「おめでとうございます、シグさん」
「わーい」

ああそうか。
確か私は太陽のしおりを奪われ、
再び本に封印されたのだった。

この光景は本から見える景色だ。

本の隙間から外の様子を窺う。
どうやら誕生日パーティーとやらをしているらしい。

「この僕が祝ってあげるんだ。感謝するんだな」
「ありがとー本の虫」

宿主のクルークが我が半身に何かを手渡すのが見えた。
分厚い…本?

「…『必勝!ぷよぷよ勝負~全12巻~』」
「これで君も少しは頭がよくなるだろ?」
「うん、いらないけどありがと」
「しっかり勉強しろよ。またテスト前に勉強の面倒を見るのは嫌だからな」

…何と言っていいか、私の本を持っているこやつは面倒臭いというか何というか。
でも、我が半身…シグという名だったか。少し嬉しそうだ。
隣に先生らしき人物がシグの横に立つ。

「えへへ」
「シグ君、これからもみんなと仲良くお勉強頑張りましょうね」
「うん」

………シグ。
仲間に囲まれて楽しそうだ。
私には得られなかったものをたくさん持っている。
あの左手も特に恐がられている節はないようだった。

我が半身は今幸せらしい。
…それを知れただけでもよかったかもしれないな。
でも私は諦めてない。

シグ。お前はいつか必ず私のものとなる日がくる。
その日まで、その仲間とやらを大切にな…。

「………」

シグが振り返る。

「どうしたの?シグ」
「今、何か寂しい感じがした」
「え?」
「なんでもない。行こうアミティ」
「あ、うん!」

赤ぷよ帽の少女と青い髪の少年が一緒に走っていく。
手にしたかった青は幸せそうだった。
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